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2019-03-18

シリーズ この方はこんな人㊺木戸松子

こちらは日本史大スキ女のわたしが、日本史上有名で気になる女性たちを
一人でも多くの人に知ってほしいと願い、もうけたコーナーです。
インタビュー形式で展開していますので、興味がありましたらご一読くだ
されば嬉しいです。お次は、この方の紹介です。

~「逃げの小五郎」こと桂小五郎を幕末から支え続け 芸妓でありながら明治維新後、彼の妻となったオフィシャルレディー~

【プロフィール】
1843~1886年
幾松という名で知られる、幕末の美貌の芸者。「幕末の維新三傑」の一人・桂小五郎
の恋人であり、禁門の変の後も物乞いに扮して、京都に潜伏した小五郎を陰から支え
た。
明治維新後、彼の正妻となり上流階級の仲間入りを果たす。
夫の死後は薙髪、「翠香院」と号し、夫の菩提を弔った。

【インタビュー】
Rico  日本を何とか良き国にしたいと願う志士たちが全国から京都へ集まり、激論
を交わし時には流血騒動も起こっていた幕末時代。京都で最も有名な女性の1人が、
こちらの幾松さんです。幼い頃から非常な美少女で、3本木一の売れっ子芸者さんでし
た。

幾松  全国各地から「我こそは」って志士たちがいっぱい来るでしょう。
彼らにとって「京の女性」って、すごくハードルが高いみたいで、皆さんとっても
緊張してたの。
それからね、その中には女性を対等な相手とする意識を持つ男と持たない男といた
の。

Rico  恋人となられた桂小五郎さんはお持ちの人だったんですね。

幾松  一目ぼれされたよ私。彼は男前で若くて独身。何よりものすごく頭が切れ
るの。わからない人に噛み砕いて理解できるように説明するのって難しいじゃない。
それをいとも簡単にやっちゃうの。だから桂はんの周りには、いっつもたくさんの人
が集まってくるのよ、いやになっちゃう。ちょっかいを出す女も多かったの。後ろから
「けり」を入れたかったわ。

Rico  「けり」はあかん「けり」は!
じゃあ、幾松さんは他の芸者の方々からも羨望の的になったんでしょうね~。
当時は志士と付き合う芸者さんは「勤皇芸者」と呼ばれ、すっごいステイタスだ
ったらしいです。

幾松  ん~、長州藩ってね、桂はん以外が宇宙人みたいな人ばっかりなの。わけ
わかんない思考回路をしているものだから、桂はんはごっつい苦労をされたのよ。
幕府から追われたり、新撰組から目を付けられたり、長州の人って過激すぎてけが
を負ったり殺されたりが多かった。

Rico  その新撰組に踏み込まれて桂さんを秘密の抜け道から河原に逃がしたん
でしょう?逃げる時間をかせぐために新撰組相手に平然と三味線を弾いて、唄い
続けた話は勇気ある美談として残っていますよ。

幾松  あれは新撰組の組長はんが、私が桂はんを逃がす時間稼ぎとわかってて、
武士の情けで見逃してくれはっただけよ。
せやけど副長の土方はんは、どえらい男前やったからポ~、っとなりかけたわ。

Rico  余談ですが私、新撰組が大好きで、中でも土方歳三さまが一番好きなんで
す!いいなぁ~、会えたんだ会えたんだ。

幾松  うん、いいでしょう~。だけどね、やっぱり桂はんよ。お顔に品があるん
よ。私、乞食姿になって三条河原に座り込んでる桂はんに、橋の上から握り飯を放
り投げてあげたんだけど、乞食の恰好をしてもかっこええのよ。

Rico  幕末の時代は男が惚れる男が活躍した時代でしたからね~。坂本龍馬さん、
高杉晋作さん、西郷隆盛さんなど魅力ある怪物がたくさんいましたからね。
おっと、もちろん桂小五郎さんも、その1人ですよ。

幾松  そうよ、桂はんは「逃げの小五郎」なんて陰で言われてたけど、あんな
すごい人は逃げてでも生き延びねば日本の大損失よ。
京の町はそれはもう悲惨だったわ。次々に外国から交渉にやってきて、誰が敵か誰
が味方かわからなくって。日本人同士が殺し合うのではなく団結して諸外国に立ち
向かうべきなのに。

Rico  幾松さんって桂さんの話題しかないのかと思いましたが、しっかりとした
自分の意見をお持ちですよね。びっくりした。

幾松  そんなの桂はんの影響に決まってるじゃないの。彼と会うまでは、その日
その日をただ漠然と生きているだけだったもの。自分のことしか考えてなかったし。
でも彼と話し合ううちに、日本の未来とか、自分たちがどう生きるべきかを真剣に
考えるようになったのよ。
向上心を持つ私だから桂はんは妻にしてくれはったのよ。

Rico  そっか~。激動の幕末の後に待っているのは明治維新ですね。桂さんはお名
前を木戸孝允に改めて、組閣の中枢に位置し日本のかじ取りをされる方です。日本の
お札にもなった「岩倉具視さん」「伊藤博文さん」と肩を並べていたんですから。

             (木戸孝允)

幾松  結婚を機に私も幾松から「松子」に改名したの。

Rico  ご結婚おめでとうございます!あれだけ尽くしたから当たり前ですよね。

幾松  そんなわけないでしょ~。結婚する前もね~、散々言われたわよ。
「元芸者が諸外国の要人の接待を出来るのか」
「芸者を妻にするなんて木戸は頭がおかしい」とかね。

Rico  それだけお綺麗で度胸もあって、自分の意見をしっかり持っていれば、まった
く問題ないと思うんですけどね。

幾松  うん、最初にひどい言われ方をされていたから、少し気の利いたことをす
るだけで評価が上がっていくのよ、変よね。そんなことより桂はんが政治のかじ取
りをする役目やったから超多忙なのよ。だけど私の作ったご飯しか食べたくないっ
て言うし、忙しくても私の顔を見ればエネルギーがみなぎるって帰ってきてくれる
の。でもね、本人の完璧主義者のせいもあってか過労死してしまった。
とっても悲しかった・・。救いは養子にもらった妹の息子の存在。私たちには子ど
もがいなかったから。

Rico  幾松さんは、その子どもをものすごぉ~くかわいがったそうです。
彼女は政府の要職に就いた桂さんの奥さんとなりました。それは上流社会の仲間入
りをすることでもあります。夫の足を引っ張ることは絶対にしない、という決意の
もと見事にそれを成し遂げ桂さんの心の支えとなりました。付き合う男で女は変わ
る、の良い例ですね。

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