宮部みゆき『さよならの儀式』
宮部みゆきさんの小説は、ミステリーも時代小説も買って損はしないこと請け合
いだが、今回の短編集はこれまでの世界観と違ってとまどってしまった。
もともと私がSF小説にまったく興味がないことも関係しているのかもしれない。
八篇からなるストーリーの中には、ロボットあり宇宙人あり、タイムスリップあり
と不思議な世界があふれている。そしてそこには決して1人では生きていけない人
間が必死に生きている。
表題作の『さよならの儀式』は、人型ロボットに家族のような情愛を抱く少女と彼
女の周囲の人間たちを、イライラしながら冷めた目線をおくる技術者の話だ。
近い将来、本当に一家にひとつの人型ロボットを持つ時代になり、子育ても介護も
ロボットが役割を担うことになるのではないか。いやいや、そもそも結婚をするこ
とがわずらわしく感じるようになってしまうのではないだろうか。などなど読んで
いる途中で、思わず不安を感じてしまった。
しかし、そこは宮部さん、人は感情を持つ生き物であることを最後には教えてくれ
ている。
くだんの技術者にも優しい視線を送っていた。
だけど、私にとってはやっぱり物足りなさを感じてしまった残念な1冊であった。
いつも期待以上のワクワクさをもらえるので、私の中での宮部さんへの期待度が大
きすぎたせいもあるのだろうが。