シリーズ この方はこんな人㊱額田王

こちらは日本史大スキ女のわたしが、日本史上有名で気になる女性たちを
一人でも多くの人に知ってほしいと願い、もうけたコーナーです。
インタビュー形式で展開していますので、興味がありましたらご一読くだ
されば嬉しいです。お次は、この方の紹介です。

~情熱的・積極的な歌を詠む美しさが異性から受け アプローチが引きも切らない飛鳥時代の女流歌人~

【インタビュー】
Rico  平成の次の元号が「令和」に決まりました。
この二文字は飛鳥時代の『万葉集』からの引用であるとされていますが、その飛鳥
時代の天才万葉女流歌人といえばこの方しか思い浮かびません。額田王さんです!

額田王 『熱田津(にきたつ)に船(ふな)乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は
漕ぎ出でな』(熱田津〈愛媛県松山市〉で船に乗ろうと月の光を待っていると、月が
出たばかりじゃなく、潮も満ちて来て船出に出るタイミングはバッチリ!さあ、漕ぎ
出すわよ!)

Rico  おおっと!これは661年の新羅征討の時の景気づけの歌ですね。
まさに天才女流歌人にふさわしい歌ですね。

額田王 今でも権力者が、歌の力を借りて人をやる気にさせようとするじゃない?
モチベーションを高める歌を人前で堂々と披露することは大事なのよ。

Rico  よく次から次へと歌が浮かんできますね~。奈良という土地の力もあるん
でしょうね。この時代は自然を詠んだ歌も恋の歌も、大らかでのびのびとしたもの
が多いですもん。
額田さんといえば、この時代の二大ヒーローから愛されたヒロインとしても有名
なんですよ。

額田王 あら、またその話?ワイドショーみたいなネタだもの、みんな食いつくわ
よね。

Rico  ご存じのない方のために説明します。

天皇の息子である大海人皇子さんと額田さんは恋人同士で、2人の間には女の子
が生まれました。幸せな2人に突然の悲劇が襲いかかります。大海人皇子の兄ち
ゃんであり、未来の天皇である中大兄皇子が「額田王を僕にちょうだい」と弟に頼
みます。泣く泣く2人は別れました。そして、額田さんは中大兄皇子の恋人になっ
たのでした。

額田王 ドラマティックに語り継がれてるけど、私って彼らのお母様(斉明天皇)
にとっても可愛がってもらって、自分で言うのも何だけど歌を詠むことが上手だっ
たのよ。一芸に秀でた女性に興味を持って接近してきたのが大海人君なの。

Rico  フムフム。だけど額田さんも大海人さんを気に入られたんでしょう?天皇
の息子さんに気に入られるなんて光栄なことですから。

額田王 誠実な人だから、いいかな~と思ったのは事実ね。子どもも授かった
しね。だけど立場上、豪族たちが自分の娘を嫁にもらってほしいと次から次へと彼に
言い寄ってくるから、あらら~という間にたくさんの奥様をお持ちになって、多く
の子どもの父親になっちゃったわ。

Rico  焼きもちとか、やきました?

額田王 全然。そんな時にお兄ちゃんから「俺の所に来ないか」って、命令がきたの。

Rico  やっぱり額田さんを見初めたんだ。兄弟のバトルですね。

額田王 え~、違うわよ。中大兄皇子は新羅をやっつけたかったし、これから無理
をするにあたって、私の歌の力を借りたかったっていう、いわゆる政治的意図があ
ったから、私を恋人にしたかっただけよ。

Rico  じゃあ、あの蒲生野のパーティー席で中大兄皇子が厳しく問い詰めたのは?

てっきり、額田さんと大海人さんに嫉妬したからと思ってましたよ。

額田王 あ~、狩りの時に大海人君が手を振ってくれたから、私も手を振っちゃ
ったの。それを見てた中大兄皇子の家臣がちくったのよ。知られちゃったからに
は、家臣の手前私と大海人君を注意する必要があるでしょう?私ならうまく切り返し
てくれるって、わかってたから大勢の人前で問い詰めただけよ。それに大海人君も
調子に乗って人前で歌ったから。ねっ、きちんとパーティーを盛り上げたでしょう?

Rico  はい、その歌がこちらですね。

額田王 「あかねさす 紫野ゆき標野ゆき 野守は見ずや君が袖振る」
 (ちょっと、そんなに手を振らないでよ。袖がバタバタ目立ってるわよ。
  みんなにバレちゃうじゃない。)

 大海人皇子「紫の にほへる妹をにくくあれば 人妻ゆえに 吾恋ひめやも」
 (人妻でも俺はお前にLOVEだぜ。この気持ちは変わんないぜ)

額田王 そうよ。歴史に残る歌よ。場も大いに盛り上がったし。

Rico  いやぁ~、びっくり!です。こんな額田さんは一生幸せに過ごされたように感じち
ゃいますね~。

額田王 何を言うのよ。娘は中大兄皇子の息子と結婚して男の子を生んだけど、
婿である大友皇子は壬申の乱で大海人君に敗れて自害したの。それからしばらく
して娘も病気で亡くなったの。残った忘れ形見の孫と2人でゆったりと歌を詠みな
がら余生を過ごしたわよ。

Rico  なるほど。額田王という人は決してイメージを壊してはいけない歴史上人物の1人
です。「絶世の美女ではなかった」「2人の皇子に愛されていたわけではなかった」
という説もありますが、そのような真実など意味はなし。虚構と想像の中でキラキ
ラと輝く「存在感あふれる素晴らしい歌人」という印象が大事なのです。