シリーズ　この方はこんな人㉚まつ姫

こちらは日本史大スキ女のわたしが、日本史上有名で気になる女性たちを
一人でも多くの人に知ってほしいと願い、もうけたコーナーです。
インタビュー形式で展開していますので、興味がありましたらご一読くだ
されば嬉しいです。お次は、この方の紹介です。

～１０人以上の子どもを生み育て　加賀百万石を守るため自らを犠牲にした　良妻賢母の鏡～

【プロフィール】
１５４７～１６１７年
加賀国の戦国大名・前田利家の正室。母が利家の母の姉であるため従兄妹同士。
１２歳で嫁ぐと２男９女を産んだ。佐々成政との戦の折には、夫が備蓄した金・銀
を軍備に充てるよう、夫をいましめたエピソードもある。利家亡き後、出家して芳
春院に。息子と敵対しようとする徳川家康に自ら進んで人質となり、以後１４年間の
人質生活を送った。長男・利長が死去すると、ようやく金沢へ帰国することができた。

【インタビュー】
Rico　　「利家とまつ～加賀百万石物語～」のヒロインまつさんです。
２００２年の大河ドラマで放送されました。ご主人の利家さんは、お若い頃は信長
さんとつるんで「オラオラ～！なめんなよ！」と肩で風切ったやんちゃな美少年でした。

まつ　　歌舞（かぶ）くっていうのかしら。顔に変な化粧をしてボロボロの服を
着て犬のように信長様の後を追いかけてたの。信長様も「犬千代、犬千代」って
かわいがってらしたわぁ。

そうよ、聞いてちょうだい！私ってば１１歳の時にトシチャンに嫁いだのよ。

Rico　　１１歳って（絶句）小学６年生の子が結婚したんですよ～、皆さん！

まつ　　最初の子を１１歳で生んだわ。それから３２歳の間に全部で１１人の子ど
もを生んだのよ。しかもね～、トシチャンて子どもが出来ても、短気で喧嘩ばかり
するから、いっつもヒヤヒヤしてたのよ。

Rico　　その短気の結果、信長さんに出仕停止の処分なんか受けちゃって浪人暮ら
しになってしまったんですよね。そのかわり、秀吉さん夫婦とは仲良くなりましたけど。

まつ　　きったな～い、ボロッボロの家で秀吉夫婦と助け合って暮らしていたんだ
けどね～。みるみる秀吉夫婦は出世しちゃった。

Rico　　仲の良い隣人同士だけに複雑な感情だったでしょう。
だけど、だけど！利家さんも、まつさんのおかげでトンがったところが無くなり、
真面目にコツコツと出世されましたよ。これぞ内助の功ですよ。

まつ　　真面目って言うか、ケチになっちゃった。だから思いっきり叱り飛ばし
たのよ。

Rico　　え～！何て言ったんですか。まつさんってば怒ったら迫力ありそう～。

まつ　　「金銀をたくわえるのも、いいかげんにしたら～。腕の立つ家臣を一人
でも多く雇うべきでしょうが。そのお金に槍でも持たせたらどうなの」ってね。
私が叱った途端、家来をスカウトするためにビビッて飛び出していったわ。

Rico　　そのかいがあって、数々の手柄を立てられ「府中三人衆」と言われるまで
になられましたよ。

まつ　　そこからが激動の人生よ。信長様が「本能寺の変」でお亡くなりになら
れ、柴田様と秀吉君がもめにもめて戦うことになっちゃった。トシチャンは間に入
って随分苦しんでたわ。

Rico　　まつさんは秀吉さんの奥さんのねねさんと仲が良かったですよね。秀吉さ
んの味方になってくれるようにと、ねねさんがお願いに来られたとか？

まつ　　そんなカワイイ女性じゃないわよ。何一つ私には言ってこなかったわ。
私たちの四女・豪が秀吉君夫婦の養女になってるから、やきもきしてたのは私の
ほうよ。悪口ではなくって、私なんかが太刀打ちできないくらい強くて懐の深い
女性ってことね。

Rico　　でも柴田さんに味方せずに秀吉さんに味方したことを恩にきて、利さんを重
要なお役目にされたのは、やっぱり夫婦ともども頼りにされていたんですよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（前田利家像）

まつ　　そのおかげで、トシチャンはすっかり生真面目で組織のまとめ役になっち
ゃった。
親分と慕っていた柴田様を裏切った自分を責めて遊び心も失くしちゃったのよね。

Rico　　秀吉さんが遊び心満載の人でしたから、ちょうどつり合いが取れたかもしれ
ないですよ。歴史に「もしも」はつきものですが、もしも利さんが家康さんより長生
きされていたら、すべての事柄がゴロっと変化したと推察されますよ。

まつ　　フフフ、そう思うでしょう？だけどね、トシチャンが亡くなった後の書状
を確認したら信長様のことばかり書いてるのよ。多分「うつけ」と呼ばれた信長様
と一番仲が良かったのは「自分」だという誇りを生涯持っていたと思うの。
実際に自分の息子たちに語り聞かせたのも、信長様の戦略や戦術の数々だったから。

Rico　　信長さんLOVEだったんですね～。

まつ　　もちろん「まつLOVE」でもあったと思うわよ。

Rico　　まつさんも「利家LOVE」でしたもんね。だからこそ、前田家をつぶそ
うと画策していた家康さんの策略を先読みして、まつさんが人質として徳川家へ自
ら志願されたんですよね。

まつ　　トシチャンと違って息子はおとなしくて優しいタイプだから。任せておい
たら家康君のいいように物事が進んでしまうもん。それはダメでしょう？だから、
私が人質になることで、思い通りに事は進まないのよ、ということを理解してもら
わなくてはね、家康君には。

Rico　　そうはいっても、本当に長い長い人質生活を耐えてこられました。
すべては前田家のためと決心されているその御姿に、心打たれる人々が数多くい
らっしゃったそうです。