和の祭典「近江のおもてなし」②

「古事記」の舞台プロデュースに挑戦した訳は・・・。

私が4~5歳のとき、大好きだった祖父母が私に言った言葉。
「あのお日様にも、夜のお月様にもこの石や草にも神様がいてるんよ」
「だから悪いことをしたら神様が全部見てるんよ」。
いつの間にか忘れていたこの言葉を『古事記』が思い出させてくれました。

『古事記』とは、天武天皇の勅命によって編纂が始まった、現存する
日本最古の歴史書です。原典は三巻に分かれていて、それぞれ違う性質
を持っています。上巻(かみつまき)は神様の物語、中巻(なかつまき)
は神様と天皇の物語、下巻(しもつまき)は天皇の物語です。

戦前の教科書には「日本神話」が載せられ、きちんと私たちの民族神話
を学ぶことができていたそうです。

しかし日本が戦争に負け、連盟国軍の占領下にあったとき、『古事記』や
『日本書紀』は学ぶ価値なしとして有害な書物扱いとされました。
これは日本の無力化を図る戦略であり、日本人の精神を根本から失わせる
ために行われた対策だと聞いています。

戦前生まれの祖父母は日本の国の成り立ちが神様から創造されたもので、
そこにあるすべてに神様が宿っていると学び育ってきたのでしょう。
だから、幼い私に繰り返し言い聞かせてきたのです。

私は『古事記』を読んだときに祖父母の言葉を思い出し、神様に対する
畏敬の念を忘れることなく歴史を刻んできた先人たちの心を、いつの日か
何かの形で表現できないものかと考え続けていました。

今回、『古事記』の中でも有名な「天の岩屋戸」を創作舞台としてお見せ
しようとするのは、私の前に神に愛されている演者や奏者が現れてくれた
からです。

弟・スサノオの暴力に嫌気がさした天照大神が天の岩屋戸にこもり、
世の中から光が失われたとき、光を取り戻す原因となったのが、音楽や舞
の力でした。

彼女たちの披露する音楽と舞のパワーがキラキラ放つひとときをお楽しみ
いただき、ほんの少しでも『古事記』に興味を持ってくださることを願って
この舞台ショーをお届けしたいと思いました。